もめてしまった事例

会ったことのないファミリー

会ったことのないファミリー

この事例のPOINT

誰の資産かわからない

 

【F社の状況】

不動産賃貸業を営むF社は、親戚が集まって経営している同族企業です。もともと地方の中核都市で名家だったFファミリーが、建設、建築、仲介、賃貸、管理など不動産関連の事業で成長させてきました。それぞれが、3代目、4代目と後を継ぎながら経営を続けてきたため、お互いの顔すら知らない親戚がいるような状態です。

 

【社長の死後に備えて】

本家の社長は10年前に亡くなっています。妻に先立たれ、息子は相続を放棄して、海外に行ったままで連絡がつきません。本家の社長が亡くなったときに、会社の資産管理を引き継いだのは甥です。とはいえ、単に金銭の処理や管理を引き継いだだけでした。前記の通り、地元の名家だったので協同組合を設立したり、ビルを建てて賃貸事業に手を出したりしていました。一方で、土地建物の名義変更はされずに、不動産が誰の所有かわからない状態となっていました。

 

—そのような状態で、社長の甥も亡くなってしまったのです。

 

共有資産を管理する人まで失いましたが、とりあえず甥の息子が引き継ぐことになりました。入出金に関しては過去の履歴から把握して、毎月送金されていた口座へお金を送りました。そして口座の名義人に連絡をとり、併せて不動産の登記簿を確認することにしました。

 

【不動産登記の名前】

不動産の登記簿を確認すると、ほとんどの土地が共有財産になっていました。共有財産の所有権を移転する際には、すべての所有権者の同意が必要になります。実際は亡くなっている人が多く、誰がその権利を受け継いでいるのか分かりません。先ずは周りで知っていそうな人に尋ねる作業から始めました。

 

【送金口座は誰のものか】

もう一つの手がかりは、会社の送金履歴です。誰にどんな理由で支払われてきたのか、一つ一つ把握する必要がありました。最初は大きな金額の支払いがあったものの、時の経過とともに額が少なくなり、存在すら分からないケースも見られました。また、借り入れする代わりに支払いを回しているケースや、既に亡くなった人へ送金し続けているケースなどがありました。

甥の息子の主張

昔は土地持ちだったという話を聞いていました。私にとっては、同じ苗字の遠い親戚が経営している会社が、近所にいくつもあるという感覚です。誰が所有権を持っているのか?相続しているのは誰か?最終的に権利を放棄してもらわなければ、土地を生き返らせることはできません。いくつも障害がありますが、やらなければ土地を売ることもできませんし、建物を建て直すこともできないのです。でも、いい加減もう疲れました。

所有者の主張

本家の会社から、毎月振り込まれているのは知っていましたが、何のお金か分かりませんでした。まさか亡くなった祖父が、あの土地の権利持っていたとは!とはいえ、私が相続するにしても、兄弟やいとこにまで承諾を得なければならないと知って、正直、面倒くさいです。

【もめる原因】

もめる原因1:共同所有の土地

土地の権利は、株式が分散しているのと同様に、所有者自身が持っていることを認識していないケースが見られます。無償で貸している場合などは、生前にきちんと書面で残しておかなければ、相続権があるのかすらわかりません。

覚えておいてほしいのは、残された遺族が一人一人に相続放棄の依頼をしたり買取りをすることで、ようやく土地を再生することが出来るという点です。

もめる原因2:地価の値上がり

上記のケースは土地の値上がりがそれほどありませんでしたが、もしこの土地が都心の一等地で、地価が値上がりしていたら話は更に厄介です。皆が所有権を主張して買取りもできないし、売却もできない状態に陥ります。共同所有の土地にビルが立っている場合などは、取り壊しにも時間がかかるでしょう。都心のビルの権利は複雑で、普通に運営されているように見える場合でも、所有者どうしが揉めているケースは山のように存在するのです。

 

【もめないためのアドバイス】

親戚一同で持っている先祖代々の土地を、無償で提供することは特に珍しいことではありません。最初は土地を切り売りしないために善意でとった行動が、次の世代やその次の世代になると、親戚同士がいがみ合う火種になる可能性を秘めています。生前から資産をきちんと把握して、代替わりの際には権利関係を整理する必要があるでしょう。亡くなる前に一度、第三者が間に入って期限や権利を書面で書き記すことが、親戚同士が揉めない手段になると考えられます。

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