対立軸でみる事例

オーナー社長がいなくなった時、誰と誰がもめるのか?

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事業承継・相続の問題と言っても、多岐にわたります。それぞれの立場によって、言い分が異なるからです。一番大きな問題は、お金の使いみち。社長が生前に意図したような経営や相続がおこなわれないことが、たくさんあります。

過去の関係の清算

社長の妻の主張

家族思いの優しい夫だと思っていたのに、何もかも信用することができません。楽しい思い出も子供への愛情も全て嘘だと思えてくるのです。こう言っては大変申しわけないのですが、義理のお父さんお母さんも知っていたのではないかと疑ってしまいます。こんな疑心暗鬼の状態では、子供と会わせることも躊躇ってしまいますよね。今までの結婚生活は何だったのかと、本当に悲しくなります。課税されなかったことだけが幸いです。

税務署の主張

遺族の方には、使途不明金の存在をお伝えしました。ご家族には一切心当たりがないとのことでしたので、裏でこの資金の流れを調べさせてもらいました。結果、行き先が掴めましたので、ご家族ではなくそちらで処理をさせてもらいました。

家族のお金

社長の妻の主張

確かに亡くなった主人が家庭に入れていたお金ですが、私腹を肥やそうと思って自分の口座に入れていたわけではなく、お給料を貯金していただけです。そのお金に相続税がかかるなんて、どうしても納得がいきません。税理士の先生に相談しても、税務署に指摘されれば払うしかないとの一点張りです。収入がなくなって将来が不安な上に、更に追加で課税されてしまい、本当にどうしていいかわかりません。

税務署の主張

これは典型的な「名義預金」です。もし、社長の個人口座に預金されていたら、有無を言わず財産と認定されて相続税がかかります。20年という期間があるとはいえ、専業主婦である妻が、1億円もの預金が出来たとは考えられません。意図的とは言いませんが、ある意味わかりやすい隠し財産と認定できるでしょう。無論、相続税をお支払いいただくことになります。

知らなかったは通用しない

社長の主張

創業以来お世話になっている税理士の先生から提案してもらった規程なので、何の疑問もなく定めてしまいました。確かに社長以外にも適用されるように書かれています。役員退職金以外に自社株の買取もしなくてはならず、大きな金額になりそうです。手持ちの現預金では全く足りません。また、今回の退職金を減額すると、私の退職金も減額することになるかもしれません。

役員の主張

以前、社長が役員退職金規程をつくられた時に、同意のハンコを押しました。その中に、自身も対象となるような内容だったために、とても嬉しく思っていました。今回、経理の役員が亡くなって、本当に支払われるのか分からなかったので確認をとりました。資金が潤沢にある会社でないことは知っていますが、決まりごとですし、きちんと支払ってくれると信じています。

取引先に乗っ取られる

15%の株式を所有する取引先社長の主張

B社の乗っ取りなんて考えてもいません。お互いに信頼し、支え合って共に伸びてきた会社同士です。B社にとって私の会社はとても重要な取引先であり、これからもっと関係を深めていきたいと思っています。

後継社長の主張

社長が残してくれた会社が、取引先の言いなりになっていると感じます。私は営業出身なので、取引先が重要なのはわかります。しかし、赤字になるような理不尽な取引条件を飲まされたりするのは納得がいきません。ただ、株主でもあるので文句が言えません。

割ることが出来ない土地

長男の主張

親父が残して相続した土地に工場が建っているので、いままで家賃をもらっていました。大変有難かったのですが、今は大きな借金を背負ってしまったので、売却して早急に現金化したいと願っています。とはいえ、弟たちに相談してもお金はないと言いますし、このままでは自己破産しなければなりません。自己破産すると、他人に土地の権利が渡ってしまうので、余計に厄介だと思うのですが。

次男・三男の主張

長男も均等に相続したので、このままの状態を継続してほしいです。特に会社は数十人の社員を抱えています。彼らの生活を脅かすことになる「土地の権利を売る」というような脅迫まがいのことを要求されても、到底認めるわけにいきません。健全で安定した経営は、亡くなった先代が口を酸っぱくして言っていたことですし、いい加減大人なのですから、個人のことは個人で収拾してほしいものです。

会ったことのないファミリー

甥の息子の主張

昔は土地持ちだったという話を聞いていました。私にとっては、同じ苗字の遠い親戚が経営している会社が、近所にいくつもあるという感覚です。誰が所有権を持っているのか?相続しているのは誰か?最終的に権利を放棄してもらわなければ、土地を生き返らせることはできません。いくつも障害がありますが、やらなければ土地を売ることもできませんし、建物を建て直すこともできないのです。でも、いい加減もう疲れました。

所有者の主張

本家の会社から、毎月振り込まれているのは知っていましたが、何のお金か分かりませんでした。まさか亡くなった祖父が、あの土地の権利持っていたとは!とはいえ、私が相続するにしても、兄弟やいとこにまで承諾を得なければならないと知って、正直、面倒くさいです。

強すぎる創業者

営業部長の主張

お世話になった創業社長の息子さんですから、遺志を継いで全力で支えてきました。でも、やりがいという意味ではちょっと失せてきました。以前は創業社長のために頑張って徹夜仕事なんかもしたのですが、そんな時代じゃないのかもしれません。給料や福利厚生が充実するのは良いことには違いありませんが、経営者としてあるべき姿を考えると、後継者には欠けている部分が多くて、私も支えることに疲れました。

後継社長(息子)の主張

社長を引き継ぐにあたって、営業部長がフォローして私や会社を支えてくれました。一方で私自身の未熟さを痛感することが多くて、営業部長のように社員が付いてきてくれません。社員の要求を汲んでも社内がバラバラになっていく気がします。もっと早くから経営を引き継ぐことが出来ていれば、先代の社長、すなわち父から直接教わることもできて、今よりは経営者らしくいられるのかなと忸怩たる思いに駆られます。

友人関係は二人だけのもの

専務の主張

社長の亡くなった後すぐに、まさか奥様まで亡くなるとは想像もしませんでした。自社株については、いずれ買い取らなければいけないことは分かっていたので、後日、ゆっくりと交渉するつもりでした。社長と一緒に起業して、お互いの家族にも支えられながら経営を続けてきたので、迷惑のかからないように話し合って来ましたが、急に買い取りをするのは金銭的に負担が大きすぎます。15人の社員に対しても、説明がつきません。

息子さんの主張

この1年で両親を亡くしたので、相続が本当に大変でした。わずかの間に2度も税理士の先生にお願いする羽目になりました。何とか相続税を支払ったのですが、土地や家をそのまま引き受けなければならず、母親の現金では足りなかったので、自分の預金と更に借り入れをして相続資金をねん出しました。父の作った会社のことはよくわからないですし、経営を継いでいるわけではないので株式を買い取ってほしいのですが、応じてもらえませんでした。借り入れの返済も大変ですので、早く現金が欲しいのですが…。

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